「週末、軽井沢でのんびり過ごしてきました」
テレビや雑誌で、このセリフをよく聞きます。
語る人はたいてい、少し誇らしげな表情。聞いている方も「いいですねえ」と相槌を打つ。週末を地方の別荘で過ごすって、なんだか豊かな響きがあります。
でも、私はずっと不思議でした。
金曜の夜、仕事を終えて中央道に乗る。たいてい混んでいます。眠い目をこすりながらハンドルを握って、軽井沢に着くのは深夜。土曜の朝はゆっくり起きて、近所を散歩して、美味しいパンを買って——そう、ここまではいい。
ところが日曜になると、もう帰り支度が始まります。早めに出ないと、また渋滞に巻き込まれる。日曜の夕方、ぐったりして東京の自宅に着く頃には、もう月曜の準備が頭をよぎっている。
移動と準備の塊を"のんびり"と呼ぶのは、もしかして無理があるのでは。
のんびりは、本当に"週末"に取りに行くものですか
私たちはなぜか、「のんびり=週末に取りに行くもの」と無意識に考えています。
平日は忙しいのが当然。その対価として週末にのんびりする。だから週末は遠出してもいいし、別荘に行ってもいい。月〜金のしんどさを、土日でリセットする。そういう考え方です。
でも、よく考えてみてください。週末は2日しかありません。そのうち半分が移動と準備に消えるとしたら、実質、本当にのんびりしている時間は半日くらい。
その半日のために、金曜の夜から日曜の夜まで、ずっと"移動の重力"に引っ張られている。土曜の昼に「明日は早めに出ないとな」と頭の片隅で考えながら過ごす時間が、本当にのんびりと言えるんでしょうか。
そもそも"のんびり"って、2日間に詰め込むものじゃない気もします。本当にのんびりした時間というのは、もっと日常の中に染み込んでいるもの。朝の光、夕方の風、何もしない数時間。そういうものが、ふと訪れるからのんびりなんです。スケジュールに「土曜:のんびりする」と書いて取りに行くものではない、たぶん。
のんびりは"週末"に取りに行くものじゃなく、"平日"に置いておくもの。
そう考えてみると、急に景色が変わってきます。
発想を逆にしてみると、何が起きるか
ではこう考えてみてはどうでしょう。
平日は地方でのんびり暮らし、週末は東京で楽しく過ごす。
平日の朝は鳥の声で目が覚める。窓を開ければ静かな空気。仕事はリモートで、または地元で見つけた職場で。夕方には散歩に出て、夜は静かに過ごす。週5日、ずっとそういう時間が続きます。
そして金曜の夜、新幹線や特急で東京へ。土曜は気になっていた展示会、友人との久しぶりの飲み会、お気に入りの店の予約。日曜は美味しいランチを食べて、月曜の朝には地方の家に戻っている。
平日にゆとりがあるから、週末は思い切り楽しめる。移動も「日常からの解放」じゃなく「お楽しみへの出発」になります。同じ移動でも、意味が全然違ってきます。
そして面白いことに、東京の楽しさが何倍にも増します。毎日通っていると渋谷も新宿もただの通勤路ですが、週に一度しか行かない場所になると、東京は"特別な街"に戻る。新しいカフェができたら本気で行きたくなる。展示会のチケットを真剣に取る。友人との約束が、ちゃんと貴重に感じられる。
平日にのんびりを置けば、週末は思い切り遊べます。
なぜ、この発想に至らなかったんでしょうか
理由はたぶん一つです。私たちは「東京に住む=東京で平日を過ごす」という前提を、誰も疑ってこなかったから。
東京は仕事の場所、地方は遊びの場所。この役割分担が頭に染みついています。だから「のんびりしたい」と思うと、自動的に「週末どこか地方へ行こう」という発想になる。平日と週末を入れ替える、なんて選択肢は最初から視界に入っていない。
でも、その前提は本当に正しいんでしょうか。
リモートワークが当たり前になった今、平日に必ず東京にいなければならない仕事はむしろ少数派かもしれません。地方で働きながら、必要なときだけ東京に行く。そういう働き方も、十分現実的になってきています。
東京を"住む場所"ではなく"楽しみに行く場所"と再定義する。それだけで、人生の構造が大きく変わります。
東京を"住む場所"と決めているのは、たぶん私たち自身の思い込みです。
置き場所を変える、最初の一歩
"のんびり"の置き場所を、週末から平日へ。
たったそれだけの発想転換ですが、やってみると驚くほど人生の景色が変わります。週末に焦って遠出する必要がなくなる。平日の朝が、楽しみになる。東京は、毎日通う場所じゃなく、週末に会いに行く"特別な街"になる。
とはいえ、実際に始めるとなると気になるのはお金です。地方の家賃、東京への交通費、週末の宿泊費。トータルでいくらかかるのか、現実的な数字が見えないと一歩が踏み出せない。
そんな方のために、週末東京族のコストシミュレーターを用意しました。希望する地方エリアと、東京に行く頻度を入力するだけで、月額コストの目安がわかります。"のんびり"の置き場所を変える、最初の一歩に使ってみてください。
週末を慌ただしく過ごすのではなく、平日にゆとりを置く生き方。週末軽井沢族の豊かさとは違う、もう一つの豊かさがあります。
週末でのんびりするより、平日でのんびりする方が、たぶん人生は穏やかです。
週末東京族は、その新しい配置を提案するメディアです。"のんびり"の置き場所を変えるだけで、人生は思っているより軽くなるかもしれません。
